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吼える月
第36章 幻惑
「足元がないとは……道になっていないということか?」
「そう!!」
「でもテオンちゃん、ユエ歩けるよ?」
ユエがテオンの後方から右側にトコトコ歩き、そして手を振る。
「ええええ!? なんでユエは大丈夫なんだ!?」
「オレが行ってみるか」
シバがテオンの前の方から右側に行くが、石柱の端ぎりぎりのところでぴたりと止まった。
「道がないな」
「でしょう!? じゃあなんでユエは大丈夫なんだ? ユエ、危ないからそこにいてね」
「わかったー!!」
「ワシ、お前の出番だ」
ぴぇ?
右後方で羽を畳んでいた熊鷹が、目をぱちぱちさせて首を傾げる。
「どうしてユエは大丈夫なのか、確かめてみて」
すると熊鷹は、とことこと右側を歩いたが、突如身体が傾き、悲鳴のようにけたたましく鳴いた。
「飛べ!! お前は歩かなくていいんだよ!!」
ぴぇぇぇぇ!!
ばさばさと空高く飛び上がったが、突如熊鷹の頭上がゴツンと凄い音をたてる。熊鷹が落下するのを、シバが走って両手で受け止めた。
「うん。上にも制限があるようだ。ワシ、身体を張ってくれてありがとう」
ワシは余程頭を強くぶつけたのか、涙目だ。
「あとは左側だけれど、夢幻回廊に誘うならひたすら前に進ませるはずだから、似たようなものだろう」
テオンは、熊鷹をテオンの傍に置いて、後方で刀を取りに行ったシバに言った。
「シバ。青龍は右と言った。恐らく仕掛けは右にある。一番わかりにくい場所に、きっと」
そして、シバは――。
「わかりにくい場所というものは、一番の盲点。即ち、ありえないと思うところ。だったら……これしかないだろう」
刀を手に取ると、右側の石柱に切りつけようとする。
しかし広刃が柱に届く寸前、柱が赤い光に包まれ、柱に刻まれていた神獣文字が赤く浮かび上がる。
「――我、神獣朱雀の名において、この結界にて敵を排斥す」
テオンが読み上げると同時に、シバの刀が青龍の青い光に包まれ、赤い結界に切り込んでいく。