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吼える月
第36章 幻惑
「正解。しかも柱が小刻みで並んでいるわけじゃない。僕達が歩くといつも円柱の石柱が両脇に出てくるから、まっすぐ歩いていた気になっていただけだ。柱はせいぜいふたつ分くらいしか見えない。だったら少しずつ曲がっていたり、方向を転換していても気づけないよ」
テオンは続けた。
「それと、青龍殿を例にすればだけれど。あそこはお兄さんの玄武の力が無効化されていた。だけど術は青龍の力で出来ていたんだ。石棺には間違いなく朱雀の力は作動しているけど、青龍の力は発動されているようだ。まあ、青龍本体が降臨した力の方が、ヨンガが用意した朱雀の罠より勝っているからなのかはわからないけど、あの時よりは僕達は神獣の力をあてに出来る。つまりは、幻術に惑う〝目〟なんて頼らなくてもいい」
テオンは思い出す。
あの青龍殿は、灯籠に仕掛けがあった。
それを驚異的な視覚で感じ取れたのは、サクのおかげだ。
あの高等動物的な尋常ならざらぬ眼力の持ち主はここにはいないが、代わりに神獣の力で仕掛けがどこにあるのか、見つけ出せる。
「青龍。どこに術がかかっているのか、わからない?」
シバは考え込むような素振りを見せた。
「それがな、未来の祠官。我の力が足りぬのか、悟られないように攪乱されているのか、右側から朱雀の力を感じるのだが、正確な位置をつかめぬのだ」
「右……つまりは石柱の右奥ということ?」
「然り」
「上等。だったら、行ってみるしかないね」
テオンは、まっすぐ続いていると思われた道から外れ、右側に歩いてみる。
途端――。
「テオン!!」
シバが身体が傾いたテオンの左腕を掴んだ。
「シバ、右側……足元がないよ!!」