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吼える月
第36章 幻惑
『ふんふんっ! ばへぇぇぇぇぇ!』
「ラックー、毛が抜けるぞ!?」
『ばへぇぇぇぇ! ばへぇぇぇぇぇ!』
「……駄目だ、興奮しすぎてる」
「どうする、サク。この迷路はどこまで続くのかしら」
「もしも終焉が見えて行き止まりでもあれば、このままラックーは俺達ごと頭からぶつかるでしょうね。そうしたらラックーはひとたまりもねぇ」
ユウナは暴風を浴びすぎて景色がよく見えないが、サクには見えているようだ。
「……姫様。そのもしもが現実になるかもしれません。行き止まりが、見えてきました」
「ええええええ!? ラックーちゃん、ラックーちゃん、どうどう、止まって! 止まってよ、ラックーちゃん!!」
『ばへぇぇぇぇ! ばへぇぇぇぇぇ!』
「サク、どうしよう。あたし達は事前に逃げることは出来るかもしれないけど、そうしたらラックーちゃんが!! ラックーちゃんが死んじゃったら、イタ公ちゃんも元に戻せないし、朱雀のいない緋陵は砂漠のままになっちゃう」
「それだけは、食い止めねぇといけませんね」
サクの目がふと天井を見た。
そして下を見て、訝しげに首を捻った。
「ねぇ、姫様。ひとつ聞いていいですか?」
「いいわ、なに!? なにか方法思いついたの!?」
「いえ……。天井に溶岩が見えて、下に赤い鏡が見えるのは、どうしてだと思います?」
「え? それは上の赤い鏡の天井が溶岩を映し出しているからじゃない?」
「じゃあなんで、下はなにも映さねぇ赤い鏡なんですかね?」