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吼える月
第36章 幻惑
◇◇◇
「どこから現われたんだよ、あんなもの!」
テオンの慌てた声が鳴り響く、蒼陵国未来の祠官率いる一行。
彼らは巨大な迷路ではなく、円環に並ぶ道を進み、隣り合っているまた別の円環の道へと移動して易々と進もうとした魂胆は、それぞれの円環に仕掛けられている罠によって、木っ端微塵に吹き飛んでしまっていた。
だったら先になにが仕掛けられているのか見せてくれれば、迷路の方を選択肢に入れて悩んで決めたものを……と思うテオンの目の前には、円環の道がぶぅぅんぶぅぅんと音をたてながら、猛速度で回っている。
さらに途中で真ん中あたりと下方に、道幅くらいの長さの刃物がこちら側を向いて、獲物を裂こうと待ち構えているのだ。
つまり、刃物を飛び越え……または身を屈めるかして避けるか、他の円環に飛び移らねばならないが、なにせ円環は猛速度で回転している。
刃物を避けるにしろ飛び移るにしろ、シバはともかく、武芸など出来ないテオンには、頃合いを見計らうのすら困難だった。
「今までだって、突然穴が空いていたり、なにか落ちてきたり大変で大変で! なんとか躱したと思ったら、あれ!? なんなの!? なんなんだよ!!」
テオンは地団駄を踏む。
到着予定の出入り口はいまだ距離があり、本当に近づいているのかよくわからない。しかし信じなければ心が挫かれるだけなので、ただ黙々と罠を躱しながら進んできたのだ。
「あれは絶対、ちびっ子に対するいじめじゃないか!!」
ダンダンダン!!
地団駄を踏めば、隣でユエも笑いながら真似をする。
ダンダンダン!!
ダンダンダン!!
「いじめでもなんでも、今回は簡単でよかったじゃないか」
シバが腕組をしながらそう言う。
「なにがよかったんだよ」
「だよ! きゃははははは」
ダンダンダン!!
ダンダンダン!!
「俺がお前を、鷹がユエを運べばいいんじゃないか?」