この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第36章 幻惑
青龍が出るまでもなく、シバが当然のように……だが疑問系で言うと、テオンの足がぴたりと止まり、テオンは何度か目を瞬かせた。
「そうだよね。そうだよ、頭脳派の僕が肉体派のシバに言われないと気づかなかったなんて」
「きゃははははは、テオンちゃんのお馬鹿さん」
ぴぇぇぇぇぇ~。
鳥にまで笑われたテオンは、面白くないような顔でシバに向く。
「だったら、行こう」
テオンは不本意ながらもシバの肩に担ぎ上げられ、シバは二度刃物を飛んで跨ぐつもりらしい。
「くっそ~。高い背と長い足が僕にもあれば……」
「いい加減諦めろ」
シバがにやりと笑う。
「くっそ~」
悔しさのあまりテオンがシバの肩の上でじたばたとした。
そのまま、まずはシバが飛出し、猛速度の円環の上に乗り、刃物を跨いで別の円環に飛び移った……のだが、気づけばまた、猛速度の円環の上にいて、また刃物を飛び越える羽目になる。
何度やっても、同じ円環から飛び移れない。
出来るのは、元いた円環に戻ることだけだ。
「これは強制的に時空間を移動させられておる」
青龍の声でシバが言う。
「抜けるには!?」
「……ひと以外を贄に」
皆は一斉に熊鷹を見た。
ぴ、ぴぇぇぇぇぇ~?
熊鷹は嫌な予感を感じたのか後退る。
「冗談だ。そんなものはあらぬ」
テオンは顔を引き攣らせながら思う。
我が国の神獣も冗談を言うのかと。