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吼える月
第37章 鏡呪
そして――。
ぶわりとシバの髪が、真上に跳ねあがった。
人面の黒い闇が、長い尾を持つ虎のような体を象りながら、シバから勢いよく出て行った瞬間、カッと目を見開いたシバは、地面に転がる青龍刀を手にすると、片足で飛び跳ねながら、空間を切りつける。
『我ハ死ナヌ、ワレはチからヲつケ、コンドコそクっテヤル。マタアオウゾ』
次第に消えゆくその声は、確かにシバの中にいた者の声であった。
光と共に、すべての存在が消滅するのを感じ取ると、シバは舌打ちをして吐き捨てる。
「逃げられたか」
その瞳と髪は、海を想わせる深い青色。
強靱な肉体を支配しているのは、シバだった。
それに微笑みかけたテオンが、ぱたりと地面に倒れる。
「テオン!? おい、テオン!?」
シバが慌てて、テオンの小さな体を揺さぶる。
もしかして、生きていたということすらも、幻影ではないのかと焦りながら。
だが、テオンの姿は消えなかった。
「大丈夫だって、シバ。テオンは疲れただけだ」
シバは、斜め上方の壁越し、割れたような穴から顔を出す、サクを見上げた。
「幻影術の重ねがけと、初めて青龍の力を使ったんだ。初めてのくせに、使いこなすなんて……すげぇ奴だよ。と、姫様、シバとテオンのところに行きますよ、俺に捕まって。ラックーは自力でな」
『ばへぇぇぇぇぇぇぇ!?』
そして、二組に分れていた彼らは、邂逅する――。