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吼える月
第37章 鏡呪
 
 玄武刀を近づければぼっと淡い光を放って反応し、うっすらと模様を浮き彫りにさせた。

 それは――偽の青龍殿でも棺の扉にも見てきた符陣。
 神獣の力を無効化させる働きを持つ符が、巨大な壁一面に描かれていたのだ。

『これだけの符陣であれば、玄武も青龍も力を発現しにくいわ』 

 玄武刀の力は、この赤い輝硬石に吸い込まれていく。
 しかしその瞬間、テオン達の姿が見えて声が聞こえたのだ。

 だがそれでも、符陣という壁に遮られて行き着かない。

 だからサクは、ラクダに聞いた。
 輝硬石と玄武刀は、どちらが硬いのかと。

 つまり神獣の力ではなく、物理的な問題を尋ねたサクに、

『輝硬石は人間が作りだしたもの。神獣の武器、さらには堅固さを誇る玄武が持つ玄武刀となれば、輝硬石など容易く打ち砕く』

 ラクダは刀だと断言する。

 同時にサクは、テオンの聡明さをわかっていたために、青龍の幻影を出すだけで終わらせない、なにか策を講じていると信じ、機会を窺っていたのだ。

 即ち、魔が一番に油断し、シバの力を強め、神獣の力を最大限に発揮出来る時が来るのを。

 それはテオンを信じていたからこそ、出来るものだった。

 符陣が破壊されれば、それまで控え目程度しか出せなかった神獣の力は、遺憾なく発揮された。
 わざと角度を変えて放ってみれば光が跳ね返ることから、テオン達は、鏡のような輝硬石で出来た空間の中に、閉じ込められていただろうことを悟ったのだ。

「鏡が、なにか緋陵で意味があるよな」

 そんなことを思い出したサクは、ぼそりと呟いた。

「棺に刻まれていた文字も、〝鏡〟があったし」 

 "偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す鏡より汝の「きからを」鏡で取り払い悪しき「ちかり」に悟られんことを"

 "我は未来を我が地(血?)で「ちりよう」に封じ鏡と民を「きはにかくて」嘆願破られたは別にかけた我が「き」の呪いを発動させたり"
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