この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第37章 鏡呪
玄武刀を近づければぼっと淡い光を放って反応し、うっすらと模様を浮き彫りにさせた。
それは――偽の青龍殿でも棺の扉にも見てきた符陣。
神獣の力を無効化させる働きを持つ符が、巨大な壁一面に描かれていたのだ。
『これだけの符陣であれば、玄武も青龍も力を発現しにくいわ』
玄武刀の力は、この赤い輝硬石に吸い込まれていく。
しかしその瞬間、テオン達の姿が見えて声が聞こえたのだ。
だがそれでも、符陣という壁に遮られて行き着かない。
だからサクは、ラクダに聞いた。
輝硬石と玄武刀は、どちらが硬いのかと。
つまり神獣の力ではなく、物理的な問題を尋ねたサクに、
『輝硬石は人間が作りだしたもの。神獣の武器、さらには堅固さを誇る玄武が持つ玄武刀となれば、輝硬石など容易く打ち砕く』
ラクダは刀だと断言する。
同時にサクは、テオンの聡明さをわかっていたために、青龍の幻影を出すだけで終わらせない、なにか策を講じていると信じ、機会を窺っていたのだ。
即ち、魔が一番に油断し、シバの力を強め、神獣の力を最大限に発揮出来る時が来るのを。
それはテオンを信じていたからこそ、出来るものだった。
符陣が破壊されれば、それまで控え目程度しか出せなかった神獣の力は、遺憾なく発揮された。
わざと角度を変えて放ってみれば光が跳ね返ることから、テオン達は、鏡のような輝硬石で出来た空間の中に、閉じ込められていただろうことを悟ったのだ。
「鏡が、なにか緋陵で意味があるよな」
そんなことを思い出したサクは、ぼそりと呟いた。
「棺に刻まれていた文字も、〝鏡〟があったし」
"偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す鏡より汝の「きからを」鏡で取り払い悪しき「ちかり」に悟られんことを"
"我は未来を我が地(血?)で「ちりよう」に封じ鏡と民を「きはにかくて」嘆願破られたは別にかけた我が「き」の呪いを発動させたり"