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吼える月
第37章 鏡呪
「でも完全に皆無だったわけじゃねぇところを見ると、なにか俺達にとっては嬉しい問題が起きていたのかも知れねぇ。たとえば、暴れる四凶が神獣を封じる力を半減させたとか」
「……ありえるかもな。四凶が外に出ないために、ある程度の神獣の力は残さないといけないだろうし」
シバが、体内にいた四凶の凶暴さを思い出しながら、ぼそりと賛同する。
「ああ。詰めが甘かったのが幸いして、俺達は本来辿り着かねぇはずのお前達のところに、合流出来たんだ」
「でもサク、あたし達ちゃんと中に進んできたじゃない? だからテオン達と会えたのではないの?」
「そうですが、姫様。イタ公の刀がなければ、俺達はテオン達と会えなかったと思いますよ。俺達が進んで来た道は、緩やかに下に向かっているとはいえ、箱の外側をぐるぐると回っていただけの気がするから」
「外側?」
「ええ。建物内が実際どういう作りになっているかはわかりませんが、テオン達は輝硬石の箱の内部に入り、俺達はそれとは別の入り口から、当たりを引き当てたテオン達の周りをぐるぐる回っていた……というのか。棺自体を箱だとすれば、俺達もまた箱の中にいて、さらにその中にある箱の中をテオン達が歩いていたと言えばいいのか」
「箱の中にある箱……」
「ええ、そんなところです。歩いていればきっとテオン達と再会出来ると思っていましたが、きっと無理だったんでしょう。俺達もテオン達も、互いに別の箱の中を、罠を解きながらぐるぐる回っていたようなもんですから」
「きゃはは。イタチちゃん、偉いね」
ユエが笑いながら、背伸びをしてユウナの首に巻かれたままになっているイタチの体を撫でた。
『それに比べて我は……』
ラクダはしゅんとする。