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吼える月
第37章 鏡呪
するとテオンが、ラクダの上で胡座をかきながら言った。
「それだったら、数匹でよくない? 一匹だって大きく手強いんだから。なんであんなにわさわさ必要なのさ。あれなら、まるで軍隊じゃないか」
「軍隊、か……」
その響きにサクがひっかかっていると、シバが口を開いた。
「ここに至るまでの様々な罠を考えれば、ここからは数で攻めるのもまたひとつの手かもしれないぞ。ここに民がいるのなら余計、この地下に至らせないために、それこそ今まで以上の罠を張っていてもおかしくないだろう」
つまり、安全と危険のぎりぎりの境界線上に、自分達は立っているのかもしれないと。
それにサクは頷いて、同意を見せた。
「同感だな。大体、深層に行って欲しくねぇのに、棺の入り口を2つ用意するのもどうかと思うんだ。入って欲しくねぇのなら、入り口を無くすか、入り口をひとつだけにして罠をたくさん仕掛けていればいい」
「確かに、そうだよね」
テオンは腕組みをして考え込む。
「それで今までの道のりを考えた。上下逆転したり、平衡感覚狂わされたり、目だけに頼っていたら抜け出せねぇ空間だった。しかもお前達のところに行ったあの時、玄武刀の指し示した道は、道なき道だ。その上で朱雀の輝硬石と思われる巨大な壁に、ご丁寧に神獣避けの符陣まで刻まれたものが、お前達がいた空間を覆っていた。それは中も同じ」
「中もって……、赤くはなかったぞ?」
シバが目を細める。
「ああ。中は普通の空間に見えても、実際は鏡があり、玄武の力は跳ね返った。俺達は外に居たが、お前達は中にいたということにもなる。神獣の力が出しにくかったのは、恐らくその巨大な輝硬石に刻まれた符陣のせいだ。それを玄武刀で壊したから、力が使えるようになった。お前もそうだろう?」
シバは、開いた自分の掌をじっと見つめ、頷いた。