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吼える月
第37章 鏡呪
「宴に出て宴を終えることが出来れば、それ以降もサクやシバ、その他テオンやユエ、諸々の動物たちの命を保証して頂けますか」
触れれば切れそうな鋭い眼差しでユウナは問う。
「……神獣朱雀の名にかけて、誓って頂けますか」
神獣の名を持ちだしたことに、ヨンガの目が細められた。
「ああ。我が国の神獣朱雀の名にかけ、この者達の命をとらないと誓おう」
そしてヨンガは続ける。
「だが、ユウナ。お前が刃向い宴を潰すつもりならば、この者達の命はないものと思え」
緋陵の宴――。
それはきっと物騒なものだろう。
そんな予感がユウナにはしていた。
だけど、乗り切ってみせる。
多くの命がかかっているのなら。
闘ってやる。
神獣玄武のような堅固たる思いで。
黒陵を……、玄武に連なるすべてを、捨てるものか。
「……ありがたきお誘い、悦んでお受け致します」
どこかで誰かが叫んでいる。
それが誰かはユウナには認識出来なかった。
にやりと笑うヨンガにどんな魂胆があるのかわからない。
だが、神獣の名にかけた約束をもしも破るのなら、その時は容赦しない。
相打ちでもいい。
ヨンガの喉笛に噛みついてやろう。
いつもは穏やかな姫の眼差しには、闘志が揺らめく。
ざわり。
闇に潜む大勢が一斉に笑ったような空気の震えを感じたが、ユウナはそれをあえて無視した。