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吼える月
第7章 帰還
ユウナは淡々とそれに応じているが、ひとり慌てるサクが止める。
「それより!! ユマお前、親父さん……街長が招集かけた理由、知っているか?」
そう、そちらの方が今すべき問題なのだ。
「ええ、知っている。だから驚いて私、サクを探しに来たの」
ユナの顔が一気に強張った。
「ねぇ、サク……」
ユマは真剣な目で、サクを見上げた。
「あなた、玄武の祠官を殺してユウナ姫を攫って逃げてきた……とかはないわよね?」
サクは険しい顔つきをした。
「なんだそれ。祠官を……俺が殺した?」
「ええ。玄武殿で仕えている誰もが、狂ったサクが祠官を殺したと目撃証言しているらしいの」
サクはユウナの顔を見た。
「俺が殺すわけねぇだろ!? 誰もが目撃証言って……、もうあそこは餓鬼しかいねぇのに!?」
「私に怒らないで。リュカ様からの伝令の早馬が父さんの元に届き、そしてさっき、遠征されていたハンおじ様が玄武殿からご帰還され……ウチに来たわ」
「親父が帰ってきた!?」
「ええ。それで彼も同じように、父さんにこう伝えたの」
"サク=シェンウは"光輝く者"を招き入れて祠官を殺害及びユウナ姫を誘拐して逃走、そしてユウナ姫はリュカ様の婚約者の身でありながら、"光輝く者"と不義密通という重罪を犯した。サクとユウナ姫を差し出さねば、黒陵は祠官代理のリュカ様のもと……、警備兵の全勢力と近衛兵の兵力を投じて黒崙を滅ぼす"
「……そう、警備兵の総司令官として、リュカ様より下命を賜ったと」
「……なんだよ、それ。俺はともかく……なんで姫様が不義密通!? なんで親父が俺達の敵側になるんだよ!! ありえねぇって。餓鬼に滅ぼされた玄武殿に、黒陵に!! 誰がそんな幻影見たって目撃証言できるんだよ。大体警備兵もいねぇのに!?」
サクは声を荒げた。
「――これはお前の画策か、リュカっ!!!」
ここには居ぬ、かつての親友の名を叫んで。
「親父が玄武殿に赴いたなら……真実がわかるはずだ。
親父に……親父に会わねばっ!!」