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吼える月
第10章 脆弱
ハン――。
本当は大恩ある貴方には、手紙よりまず先に言おうと思っていたんだけれど、サクとずっとお話中だから、言わずに旅立つことにしました。
あたしね……。
貴方がサクの父親で、サラの夫で、黒陵国の武神将であること、心から誇りに思っているの。
その貴方に、最後まで色々迷惑かけてしまい、ごめんなさい。
貴方の片腕の代償は、必ずあたしがなんとかします。
あたしのために、本当に本当にごめんなさい。
そして……。
今まで温かく見守っていてくれてありがとう。
今までお父様に仕えてくれていてありがとう。
そして、遠征……お疲れ様でした。
どうか、サクを、サラを、黒崙を。
黒陵国の民を護って下さい。
ハンは、あたしの大好きな……第二のお父様でした。
いつまでも健やかに。
サラ――。
久しぶりにあったのに、可愛くない態度でごめんなさい。
せっかくの鶏粥食べれなくてごめんなさい。
色々お話して元気づけてくれようとしたのに、笑えなくてごめんなさい。
せっかくお手伝いを任せて貰えたのに、役立たずでごめんなさい。
サラはすごく若くて可愛らしい、あたしのお姉様のようでした。
そしてハンとサクを護ろうとする勇ましさは、あたしの憧れとなり……これからの指針となりました。
おいしい料理と、色々と気遣いありがとう。
サクを生んでくれて、本当にありがとう。
ハンといつまでも幸せにね。