この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第10章 脆弱
 

「もしかして、傷心のユマがタイラに抱かれている……とか?」


「それならまだいい。自宅から出てきた街長がさっき言っていたが、街長の部屋にある、街長だけが持つ黒崙の紋章の飾りがなくなっていたそうだ」


「……」


「なにか嫌な予感がするんだ。タイラはユマに盲目な面がある。もしもユマが……お前に振り向いて貰えない腹いせに、タイラを伴い、街長の権威たる紋章を持って、街の外に出たとしたら……」



 その時だった。


 一頭の馬の蹄の音が、街内に響いてきたのは。


「サク、物陰に隠れろ」


 ハンの指示で、花壇の影にサクは隠れた。



 漆黒の夜空の元、赤い月が照らしだしたのは――

 大きな荷物を馬の尻に括り付けた、馬上の若い青年の姿だった。


 きりりとした面差しは、まるで氷の彫刻のように精細に整い、長い黒髪を高い位置からひとつに結んでいる様は、実に気品があって凜々しい。


 その青年が前に抱くのは、5歳ほどの幼女。

 黒髪は肩で切りそろえられ、赤く小さい唇が愛らしい。

 大きな目をくりくり動かしてハンを見ていた。


 幼女の服装は、黒陵でも流通している赤い貫頭衣であるのに対し、青年が身につけているのは、兵士のような武具ではなく……上質な絹布を体に巻いただけの軽装であり、狩猟を主とする山深いこの国においては珍しい、異国の服装だった。


 その奇異な服装は、武闘大会の観覧席に座していた……倭陵中央の、皇主やその側近達が似たような服装だったことをサクは思い出す。


 このふたりがどんな関係かは知らないが、兵士ではなく、皇主に仕官している可能性が高い者が黒崙に出現したことに、サクも……そしてハンも体を強張らせて、警戒する。


「汝、黒崙に住まう玄武の武神将か」


 青年は、声高に言った。


「いかにも」


 威厳に満ちた様子で、ハンもまた恐れもせず馬上の青年を見た。
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ