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吼える月
第11章 儀式
 


 本来なら馬鹿馬鹿しく、危険で愚かしい行為だ。


 だが愚行も時に、無理に強行することで、"そこまで自信があるのなら、告白は事実かもしれない"という群衆の心理を働かせる。

 その心理は嘘を後押しして先入観となり、人々の錯覚を煽り、真実を見抜く目を曇らせる。



 身形がまるで変わっているサク。

 色狂いと言っても過言ではない、妖艶さと凶暴性を見せるユウナ。


 このふたりは今、外観からしていつものふたりではないのだ。

 睦み合うこと自体が、ありえない事象。


 心理的にリュカの慧眼を誤魔化せる可能性が高い。

 ひとつ危惧すべきは、リュカがかけた穢禍術の鎮呪方法をリュカが知っているのかどうか。それ如何により、彼の事実認識も変わってくる。


 だがもしも――。

 リュカが、"あれはユウナやサクではない"と断言したのなら、黒崙から兵もリュカも引く。

 そしてそう断言させるには、兵士達の同意で煽る必要がある。



 準備が整っていない舞台で――

 今、取れる術はひとつだけ。



 そう、だからこれは賭けなのだ。




「こちらで10数え終った頃にお呼びしますので、入ってきて下さい。

その間に、指輪をユマにつけさせます」



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