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吼える月
第12章 心願
  

 唇を重ねれば、きっと理性が崩壊してしまう――。


 だから擬似的にでしか絡み合えない、舌と舌。

 近くて遠い、唇と唇。


 応えてくれるユウナの唇を、力尽くで奪いたいのをひたすら我慢しながら、これは、治療を妨げる痛みをそらせるための行為だと言い聞かせて。


 そう、すべて治療行為でしか、ユウナを愛でることは許されないのだ。

 そんなサクの心知らず、ユウナはサクを誘うように懸命にサクの指をしゃぶっている。


「すっげぇやらしいです、姫様の舌遣い……。うっとりとしちゃって、そんな気持ちいいですか、俺の"舌"」


 意地悪げに再度舌を動かして見れば、ユウナが赤くなり……舌の動きが止った。するとサクは指を動かして、ユウナの舌を愛撫する。


「想像したんでしょう。こうやって、いやらしく俺と舌を絡め合わせていること。どうですか、感じました? ……濡れちゃいました? もっと強く弄って貰いたくなっちゃいました?」

「……っ」

「素直な姫様だ。だったら……おねだりして見せてください。触って欲しいところを教えて下さい」


 サクの精神力は、奪われ続ける生気に消耗した様子を見せずに、ユウナを翻弄させる余裕めいた男を演じさせる。


「そうしたら俺……」


 そんなサクも、びくっと体を跳ねさせる。


「ああ、姫様。わかりました、わかりましたから!! そんなに腰をふりふりさせて、どこの上でおねだりしているんですかっ」


 猛るサクの肉棒の上で、ユウナが無意識に腰を揺らして、秘部への刺激を欲しがり始めたからだった。

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