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吼える月
第12章 心願
 


「そ、そんなっ!!」

「殺生な!!」



 動こうとしない兵士達に、リュカが冷たく言い放った。



「ここに残るというのなら、それ相応の処分を覚悟されよ。ここは黒陵国。黒陵には黒陵の掟というものが存在します。それはたとえ中央の近衛兵とて……断行致します」


 その威圧的な物言いと、殺気混じりの睥睨に……兵士達は恐れをなした。

 勃起したモノが、リュカへの恐怖に萎えてしまうほどに。


 そして――。



「……タイラさん、ユマさん。……失礼しました」



 リュカは兵士を従え、部屋から出て行く。

 サラもハンも共に建物から出たようだ――。



 部屋には、男……サクと、女……ユウナしかいない。

 否、寝台の下から……一匹。



『小僧……やり過ごせたのに、なにを泣く』


 それはユウナの頭に飛び乗り、長い尻尾を伸ばして、サクの……雫が零れ落ちる頬をまさぐった。


「……泣いてねぇよ」


『………』

「………」


『……お前、わかっていたのだろう? あのリュカというもの……』


「………」



『――お前だと気づいていたことを。だから……』


「……頼む。黙っていてくれねぇか」


『………。……わかった。今、小僧の力を戻し、娘の情欲の煽りを解く。さすがにこの状態で抱くのは小僧が不憫だ。……ここまでの状態なら、痛みを感じずとも果てまで連れられるだろう』

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