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吼える月
第12章 心願
  

「俺なんですよ、姫様が感じている相手は。こんなに俺に感じていても……、どんなにリュカに傷つけられても。それでも……姫様は……、そこまでリュカが好きなんですか……!?」


「はっ、はっ、はっ……んん、ぁあああ、んあぁああっ……ああ、だめ、だめ、だめだめだめぇぇぇぇっ!!」


 ユウナの体が、果てに向かって硬直し始める。



「姫様……っ、今姫様を抱いているのは誰ですか。ねぇ……誰の体で果てようとしているんですか!?」


「は……あ、……あ、ぁ……っ、あぁ……」


「どうして俺の名前を呼ばなくなったんだよ、なぁ……言ってくれよ。俺の名前を。それだけでいいから。姫様が俺だとわかってくれているのなら、それだけで俺はいいから。だから姫様……俺を感じて。俺の名前を呼んで」



 果てようとするユウナの瞳に宿ったのは恐怖。

 リュカがかけた憎悪の言葉。


 それを知らずに、サクは切実に訴える。

 共に果てたい欲を飲み込みながら。


「姫様……っ、姫様は……誰に抱かれている? 姫様を……気持ちよくさせているのは誰だ? 

なぁ姫様、あんなに離れたくないって言ってくれたじゃないか。……呼んでくれよ。姫様が……ずっと一緒にいたい男の名を」


 "名前"


 それはユウナを縛る呪い。

 呪詛より深く、忌まわしく心に刻まれたもの。

 
 切ろうとしても切れない、憎悪の鎖。


「呼べよ、姫様。姫様を……愛おしく抱いている男の名前を――っ!!」

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