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吼える月
第12章 心願
――生涯覚えておけ、僕の名を。さあ、言え、僕は誰だ!? 言うんだ!
だから彼女は、口にするのだ。
泣きながら、その名を口にするのだ。
「………リュ……」
――もう一度言えよ、お前を心から憎悪している男は誰だ!?
「……リュ……カ……っ」
「――くっそぉぉぉぉぉ!!」
サクは酷く悲壮な顔をしながら、怒りにも似たような荒々しさで、彼女に自分を刻みつけるかのように大きくユウナを貫く。
「ああ……っ、ああ、ああぁ…っ、あああああああああっ!!」
ユウナはか細い悲鳴のような声をあげて、嫋やかな身体をぐぐっと大きく仰け反らせ……果てた。
瞳の色を黒に染めながら崩れ落ちる体を、サクが片手で抱き留めた瞬間――、無防備な彼女は彼の手にあるというのに、最後まで名を呼ばれることがなかったサクの心は、まるで晴れなかった。
「……ちくしょう……」
サクは彼女から自らを引き抜くと、意識を失った彼女の体を強く抱きしめて咆哮した。
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
まだ熱のひかない己の肉体。
体も心も彼女を狂おしいほど切なく求め続けているのに、彼は己の欲をこれ以上はぶつけることはなかった。
ユウナと体を繋げるのは、彼女の痛みを伴う発情という〝呪い〟を、鎮静させるためだけのもの。
それは、最初からわかっていたことだ。
それを了承した時点から、サクは……愛しい彼女に口づけることもできない。
「ユウナ……」
意識がない時でしか、その名を呼ぶことも許されずに――。