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吼える月
第12章 心願
 

「サクはそんなに、そんなに格好よくないもの!! そんなに色気ないし、そこまで長い髪じゃないわ!! サクを騙る不届き者!!」



「なんで姫はわからないんだろう。なぁ、姫さ。怯えてるっていうより、顔が真っ赤で……どちらかと言えば、男としてすごくサクを意識してるんじゃ……っていうのを色恋に疎いサクが気づくはずないか」

「サク……今までもいい男だったよな。それで格好よくないと言い切るとは、姫って実は超絶の面食いだったのか?」

「きっとリュカ様が美貌過ぎたんだろうよ」

「サクは、今まで通りですげぇ美貌だと思うがな。俺は俄然サク派だ」

「今のサク、確かにすごい色気だよな。とうとう、姫とヤッたのか」

「色気あるのは姫もだろ。あてられそうだ。これはヤッたな」

「サクの念願叶ったのか? だけどなんでこんな喧嘩してんだ? サク、姫様をイカせられなかったのか?」

「まぁ……初めてだから暴発でもしたんだろうよ」

「一応は……おめでたいということで。赤飯……こんな時だけど、今から大急ぎで炊いてこようか」



「うっせぇですよ、姫様。どうせ俺は昔から色気なしの不細工ですけどね、俺だって歩くだけで女を孕ませると名高い色男の血を引いてんです!! まるきり他人じゃねぇんですってば!! 俺を見てお袋がぽっとなったくらい、その色男に似てれば……俺が誰だなんて一目瞭然でしょう!! 他人の空似なわけねぇじゃないですか」



「ヤッた割には、こう……甘ったるい雰囲気がねぇな」

「ああ。だけど久々に聞くな、元気のいいサクの声。最近は顔だけではなく、声までもがどよーんとしてからな。姫とヤれた効果か」

「本当にヤッたのかな。というか、ユマの前で言っていいのか、こんなこと」

「あ、……ユマはどうなんだろう。サクだとわかってるのか?」

「わかっているみたいだね。辛そうだもの」

「見ただけのユマはわかって、サクに抱かれた姫はわからないのか?」

「一方通行のままか? なんだサク、襲ったのか?」

「まさか、サクはそんなことはしねぇだろうさ」


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