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吼える月
第14章 切望
  

――あ、なんだ……水が言うこときかねぇ!? どういうことだ、イタ公!! ぐぅぐぅ鳴らして死んだフリするなよ、聞けって!!


 そして低くなる気温。


「俺とお前では、力の行使した経験値が全く違うんだよ、サク!! 俺は元々大量の敵を捌くのが得意、だから見とけよ、父の力。覚えておけよ、俺の闘いざまを。――"大氷刃"」


――うお!? な、なんだ気温が急激下がった!?


「え、なに……氷柱(つらら)? 水が氷柱になったの!?」


 うねる水流から凍った刃が疾風の如き早さで、次々に警備兵や餓鬼に突き刺さっていく。そして突き刺さった体は凍り付き、木っ端微塵に吹き飛んでいく。


 同時に男の体にも氷柱が突き刺さるが、男の抵抗により凍り付くところまではいかず、動きをただ縛しただけ。


「――サク」


――うわっ、氷柱が餓鬼を刺し殺して……吹き飛んだ!? 待てよ、声が…。


「よぅ、馬鹿息子」


――親父!? ま、まさか親父の仕業か!?


「仕業とは随分だな。……餓鬼はどうだ?」


――あ、ばりんばりんと吹き飛んで……。待て、待て待て!! そっちはどうなんだ、そっちは!! 俺は親父達を……。


「同時進行だ、問題ない」


――同時……。


「絶句するな、馬鹿息子。武神将なら当然だ。複数箇所同時に力を行使することは、サラだってしてたことだ」


――………。



「馬鹿息子」


――……やべえ、親父達の強さに泣けてきた。



「今さらかよ。だが……ありがとよ」


――結局は俺が助けられたんじゃねぇか。



「いえいえ、親父達は、できのいい息子さんに助けられました」



――………ケッ、嘘臭ぇ棒読み。



「ま、感謝はしてるぞ、馬鹿息子。お前が力で接触してくれたおかげで突破口が切り開かれた」


――なぁ、親父。その……片付いたらでいいけど、その……親父に残っていた分の力もくれねぇか?


 珍しくサクが急かすようにしてくる"おねだり"に、歯切れの悪さを感じつつ、


「元よりそのつもりだ。待ってろ。今、片をつけるからよ」



 ハンがそう呟き、サラに目で合図を送った直後――。


 ハンの手とサラの手が握る刃物が、同時にゲイの首と胴を斬り落とした。

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