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吼える月
第14章 切望
――お前が俺を愛するただの女として生きられるよう、俺は護る。
ハンへの恋に堕ちた自分を、再びサラは思い出す。
若かりし、あの時と同じハンの姿が目の前にある。
護るべきものがなにか、目的をもった男は強い。
「うりゃあああああ!!」
ハンの気合いは……凄まじかった。
この男を倒せば、サクの危機的状況も改善される。
それがわかればこそ、サラも力を振り絞る。
ハンの頭に、またもやサクの声が聞こえた。
――イタ公、しっかり……なんだよ、くったりしながら腹の虫騒がせるなよ。ネズミちょっと我慢しててくれよ!? ええと、こっちと親父達…同時に力を使うのはどうすれば……。イタ公、心臓に悪いからそんなにくったりするなよ!! ひ・め・さ・まっ、あんたはいいですから。俺の後ろにいて下さいっ。
向こうの方がかなり状況は切羽詰まっているらしい。
水流が一気に弱まり、金色が色を強めた。
それでも雨は降り続けている。
イタチ姿らしい玄武が、サクに悲鳴をあげさせるほどくったりとしてまでハン達を回復させる慈雨を降らし続けていることに、気づく者はいない――。
ゲイを仕留める時間はないのかもしれないと、ハンは判断した。
「……サク、お前が俺達を護ろうなんて、100年早いんだよ。サラ、雑魚を凌いでくれっ!!」
「わかったわ」
ハンは、片手を天に上げた。
「偉大なる玄武に願い奉る。我の片足を代償に」
「ハン、ちょっ……」
再び代償を必須としたハンの嘆願の儀が始まり、サラの悲痛の声が響く。
「その力今ひとたび……このハン=シェンウのもとに……!!」
水流が勢いを増し、サクから……ハンの支配下となる。