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吼える月
第14章 切望
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一体、サクはどうしてしまったのだろうか。
ユウナはずっと怪訝な顔を向けていた。
突然走り出し、海が真下に見えるこんな切り立った崖に連れてきて、手を宙に彷徨わせて、うんうん唸り続けていたのだ。
苦しそうに時折肩でぜぇぜえ息する様を心配して、声をかけてみても、
――姫様。すみませんがここから先、黙って静かにしていて下さい。すげぇ集中力…というより理解力を必要とするんで。教え下手な誰かのせいで、俺の頭ぷすぷす煙が出てるんです。燃え尽きる前になんとかしてぇんですよ。
そうげっそりとした顔でサクが言うと、足元の子亀がのそのそと動き、かぷりとサクの足に噛みついた。
――イテテ。難しすぎるんだよ、お前の言葉は。俺の頭にあれだけ"知識"を植え込んだんだから、理解できる場所はねぇのわかってるだろうが!! ……見本!! とにかく言葉より実践で、見本!!
サクは子亀になにやら教えを乞うているようで。
喋らぬ亀が、なにを知って教えるというのか……。
サクがおかしいのは目なのか、頭なのか――。
本気で心配したユウナの後ろで、動く影。
……近衛兵の骸が、集まっていた。