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吼える月
第15章 手紙
 

「サク。あたしに甘えて。色々考えてみたけれど、多分サクは何度聞いても涙の理由は教えてくれないでしょう」

「………っ、あれは……っ」

「だったらムリに言わなくてもいい。サクが言いたいときに聞かせて。だから今は……お願い。あたしに甘えて、あたしを必要として」

 ユウナの手がサクの髪を撫でる。


「あたしは無力で、サクに護られてばかり。どうすればいいのかいまだ答えが出ないけれど、それでもサクが休める場所にはなれる。どう考えてみても、そうでありたいとあたしの心が願うの」

「まさか……船の上でぼへぇっと考え込んでいたのは……」

「あら、顔に出てた? これでも色々サクを慰める方法を考えていたのよ」


「……リュカのことではなかったんですか?」


「リュカ……」


 その名を呟いたユウナの顔が悲嘆に曇る。

 それを見たサクの顔も悲哀に歪められたが、ユウナが発した言葉はサクの思っていたものとは違った。


「リュカのこと、今さら考えても結論は同じだわ。あたしはリュカに裏切られお父様を殺され国を追われ、ハン達黒崙の民も苦しめられた。

リュカに対してどんな感傷があろうとも、そればかり囚われては前に進めない。あたしの背を押してくれたハンやサラ達に、しっかりしろと怒られてしまう」


「………」


「あたしは、強くなりたいの。サクが強くなったように、あたしも変わりたいの。だからまず心構えから変えないと。皆のおかげで船に乗れた感謝を忘れずに」


「………」


「サク、あたしはサクを裏切らない。サクと共にいる。黒崙に代わる故郷になりたい。だから辛い時悲しい時……頼りないかもしれないけど、少しでもあたしが傍にいることを思い出して。あたしに寄りかかって。あたし、できることはなんでもしたいわ。

あたしはサクから離れないわ。あたし、サクをひとりにさせないから」


「姫……様……」


 サクの声が熱に浮かされたように上擦った。

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