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吼える月
第15章 手紙

「こんなに近くにいるのに……どうして俺の幸せ、姫様にわかって貰えねぇんでしょうかね。昔から一切ぶれずに、なにひとつ変わってねぇのに」

「サ、サク……?」


 愛おしそうに、ユウナの手の甲に何度も唇を寄せ、舌を這わせる。

 どうか、ユウナの心が自分への恋心に変わるようにと祈りを込めて。


「こんな健気に姫様に尽くしてるのに、姫様の"思い込み"で一方的に切られるのは、やりきれねぇですよね……」


 詰るような揶揄めいたその目が、斜め下からユウナの目を射抜く。


「ねぇ、姫様。だったら……ずっと一緒に居て、ふたりで幸せになればいいだけの話じゃねぇですか。俺は姫様が隣にいるだけで幸せだし、姫様を不幸にはしませんよ? 姫様の心まで守り通します。

幸せになれるという確証が欲しいのなら――」


 切なげに揺れたその目は、焦がれるような切迫感を秘める。



「……俺の嫁に、なりません?」



 
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