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吼える月
第15章 手紙
「だったら、なにが不服で?」
「不服と言うよりも、そ、その……」
「なに真っ赤な顔で両手の人差し指をつんつんしてもじもじするんですか。言ったでしょう、これは命がかかった真剣な治療なんだと。私情は禁止!!」
「ん……」
「ん……じゃありません。返事!!」
「は、はい……」
「じゃあいいですね、姫様を治療するのは今もこの先もずっと俺だけです。どんなに恥ずかしがろうが、姫様に異常を感じたら、俺は姫様を治療します。それに対して不服を申し立てしないこと、治療の最中も終わってからも、俺から離れて逃げたりしないこと!!」
「条件……増えてない?」
「増えてません!!」
「そ、そう……? だったら、そうで」
「では、復唱して下さい」
そしてユウナは自らの言葉でもって、宣誓させられた。
「あたしユウナは、サクがするどんな治療にも抵抗せず、サクに従い、サクだけの治療を素直に受けることを約束します」
それを聞いて、サクは満足そうに朗らかに笑った。
どさくさながらも、ユウナは自分が治療相手がいいと言ってくれた。
それは即ち、自分に抱かれることは抵抗がないということ。
だが――。
「惚れた女が正気どころか魔性さ強めて煽りまくる上、さらに命がけの寸止めまで強いられて。そんな苛酷な治療に挑む俺に、ちょっぴりと……英気を養う意地悪も許して下さいね」
「ど、どんな……? 痛いことや泣かされるのは嫌だわ……」
前半が早口すぎてよく聞こえなかったが、一応その意地悪具合を聞いてみる。
「痛いことはしませんよ。むしろ気持ちよくなるだけで。泣く……ん、ナクと言えばナクなんですが……。たとえば……」
傾けられたサクの顔。サクの舌がユウナの首筋を這う。
「は……ぁんっ……」
自分から甘ったるい声が出て来たのに気づいて、ユウナは真っ赤な顔で口に手を押さえて、サクを軽く睨む。