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吼える月
第15章 手紙
 
 
「ふふ。こういう可愛い啼き声を聴くための意地悪です。姫様がお望みなら、最後まで……でもいいですが? むしろ大歓迎」


 にやりと挑発的に笑うサクの顔は妖艶で、ユウナは真っ赤になって悲鳴を上げた。


「待つという立場は変わらなくとも、それでも……今までよりはよっぽどいい。折角親父が後押ししてくれたのなら、俺……前向きに頑張って見ることにします。勝負ですよ、姫様」


 サクはユウナの額に唇を落とす。


「必ず、リュカ以上に俺を求めさせてみますから」

「……っ」


「だからね、姫様。リュカに対して芽生えていた恋心を否定しないで下さい。それは姫様にとってはちっぽけなものであろうとも、姫様は確かにリュカが好きだった。そして……リュカも姫様を好きだった。

じゃねぇとあいつが可哀想じゃないですか。あいつの思う処が別にあったとしても、あの時の誓いは本物だと、俺は信じてます。あの時、引き下がった俺の目には狂いはなかったと」


 ユウナにはわかった。

 "あいつ"……それはリュカに対するものだと。


 サクもいまだリュカを切り捨てられない。

 サクらしいとユウナは静かに微笑んだ。


「あ~。なんか腹に抱えていたものをさらけ出したら、眠くなっちまいました。さあ、姫様……寝ましょう。起きたら、姫様と絶対離れないための儀式をしなきゃならんので」


 そしてサクは片腕でユウナを抱くようにして、ユウナと共に寝台にごろりと横になった。


「サ、サク……」

「なに恥ずかしがっているんですか。添い寝以上のこともした仲なのに。おや、それとも期待してます?」

「サク、どこを触っているの!!」

「まだ甘えているんですよ、俺。姫様~」

 サクはすりすりと、ユウナの頬と自分の頬を擦り合わせた。

 そのたびにユウナの心臓は破裂しそうなほどに高鳴る。
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