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吼える月
第15章 手紙
『サク、希望を棄てるな』――。
1年前も今も。
選ばれていなかったわけではないのなら。
『決して諦めるな』――。
諦めたくないのだ、無性に。
今までのように、諦めようとも思いたくない。
諦められないのなら、攻めるまで。
虎視眈々と陥落するのを、ただ待つだけでは終わらせない。
宣言してしまった以上、もう……引けない。
引くつもりもない。
男の意地だ。
なにがなんでも、ユウナを心ごと手に入れたい。
ユウナを妻にしたい。
その願望だけで、サクは……どこまでも強くなれる気がした。
『サク、お前の未来は棄てたもんじゃねぇぞ』
色彩に溢れ始めた、残酷なまでも美しいこの世界の行く末に、光明が差したように思えた。
ハンを失いサクの心に空いた隙間を埋めたのは、
『愛する我が息子に、幸あれ』
子を思うハンの手紙。
そして、サクの力になりたいというユウナの心。
『生きていれば必ず、お前に光が差すから――』
なにかが変わっていく……、
そんな気配を漂わせた……船旅の初日――。
第1部 ~玄武の章~ 完