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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 

『これ、なにを怠ける』


 ぱしぱしぱし。


「……もう、どうとでも俺を罵って下さい、イタ公様」

『………。小僧、まさかお前……』

「はい、これから心身共に気を引き締めねばならぬというこの大切な時に、そんな大層なことを言えるだけの器でもなければ、そんな時機でもないのに、姫様に求愛も求婚もしてしまいました。嫁になりたいと言わせてみるとまで豪語してしまいました」


『………』

「………」



 ぱし……。



『………』

「………」



 ぱしぱし……。


『………』

「………」


 白イタチが上から、サクの顔を覗き込んだ。

 くりくりと動く大きなつぶらな目。


 そして――。


『シャーッ!!!』

「ひっ」
 


『馬鹿だと思っていたが、そこまで馬鹿だったとは……。

その弛んだ精神、鍛えてやるわ!!』



 ぱしぱしぱしぱし、ぱしぱしぱしぱし。




『小僧、さらに片手ずつ5000回拳立て追加!!』


 

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