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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
◇◇◇
出港してから夜が明けた。
サクの予定では、早々にユウナと玄武の武神将としての絆を強めようと、ハンが別紙にて記しておいてくれた儀式をしようとしていたのだが、
神獣に認められて力が使える状態(=武神将)であること。
サクの片耳の白牙の耳飾りと引き替えに、ユウナからも契約の証としてなにかを貰い、それを常に身につけること。
その2つの条件があった。
2つめはユウナの髪でも一束貰おうと考えていたが、問題は1つめ。
まだまだ荒削りではあるが、サクが父を超える玄武の武神将となりうる可能性がある希少な素材だと、新生玄武……イタチ自身わかってはいた。
だが、神獣が認めて例外的に力を貸したそのありがたみに感動し、その慈悲を厳粛に受け止めてより高次な武神将となるために鍛錬を励んだり、まだまだ課題ありの力の行使を勉強するどころか、僅かな時間で女に走ろうとするその甘い考えを戒めようと、サクに出した鍛錬の課題が多すぎた。
そして言ったのだ。
――これらの鍛錬をすべて消化しないかぎり、今後力を貸さぬ。
つまり、儀式どころか武神将の剥奪の危機。
さらには――。
――今後姫との一切の触れあいも禁じ、そうなりそうものなら我の力にて、徹底的に邪魔する。
……サクは、イタチが食事に出かけても、ただひたすら鍛錬に励む。
いない間休憩したり誤魔化したりしないのが、イタチがサクを好む理由のひとつでもある。馬鹿は馬鹿であるが、サクは馬鹿正直であった。
そこがサクとイタチとの信頼関係となっていることに、サク自身気づくことなく、ただひたすら身体を鍛えるサク。
苦しげな吐息が部屋に響く。