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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
なんでここまで男らしくなってしまったのだろう。
ハンによく似てはいるが、ハンより凄くいい男に思える。
まっすぐに見つめるその眼差し。
野性的で険しいのに、どこか憂えて寂しげなその面差し。
大人の妖艶さと子供の無邪気さを併せ持つ、不思議な男。
自由に羽ばたいていきそうなそんな翼が見えそうなのに、それでも自分の縛りを受けてここに居る。
自分を護ろうと、必死に身体を鍛え上げている――。
そんなサクから、ユウナは寂しさ以上に鬼気迫る闘志を感じ、そしてこの旅はただの旅行ではないという辛辣な現実を教えられたような気がした。
サクですらこの旅に危機感を持っているというのに、自分はなんだ?
なんでただぼへっとサクの鍛錬姿を見ているんだ?
その他していることは、食べて寝てサクの鍛錬の邪魔をするだけだ。
「これじゃだめだわ」
自分も、のほほんとただサクを見物しているわけにはいかないと、サクの横にて拳立てに挑戦する。
「ふ……ぅっ」
しかし1度で潰れる。
昔はサクより出来たはずなのに、身体が鈍りすぎていたようで。
今度は腹筋をしてみた。
「いぃち、にぃ……きゃあああ、サク、足、足を押さえてぇぇぇっ」
「姫様はいいんですよって、くっ……天然で煽りやがって」
ばたばたと揺れ動くユウナの足は、悩ましげで。
しかも服がはだけて、際どいところまでまくれ上がっていて。
ユウナの言葉通りその足を押さえるサクは、その艶めかしい足を必要以上に見まいと顔を横に背けた。
触れる手からの柔らかさと熱さで、必死にユウナを抱いた時のことを思い出さぬようにと、邪念と戦う。