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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
出港して2日目の昼過ぎ――。
サクの懸命な努力の甲斐があって鍛錬が終了した。
「イタ公!! 拳立て、片手ずつと両手、それぞれ1万!! 腹筋と背筋それぞれ1万!! 合計5万!! その後形や素振りの復習!! 親父は5日かけたところを、俺は半分以下で終えたからな!! だから姫様とのこと、いい感じになっても、邪魔するなよ!!」
『………。本当に5万、実質丸1日で終わらせたのか?』
様子を見に部屋に訪れた白イタチの小さな口が、驚愕のあまり、外れんばかりに開ききった。
つぶらな瞳も開ききっている。
「ああ、終わらせた。途中数がわけわからなくなって、面倒臭ぇからまた0から数え直したから、実際はそれ以上だ」
疲労困憊の様子のサクは、よろよろとしながらも清々しい笑顔を見せた。
『……船旅の間かかるだろうと思うて安心していたのに、もう終わらせたのか……。なんと、これだけの鍛錬量をこなしてしまえば、これ以降の鍛錬を安易に口に出せなくなってしもうたではないか』
「なにぶちぶち言ってるんだよ。いいか、約束だからな。終わらせたんだから、ここからは俺と姫様の時間を邪魔するなよ。別にやましいことをしでかすつもりはねぇけど、だけど……大事にしてぇんだよ、姫様との時間」
サクの訴えは悲痛な程に切実だ。