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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
空の青と、海の青。
その端境にある遠い場所に、蒼陵という蒼い国がある。
どこまでも澄み渡った"透明さ"に包まれた、まだ見ぬ土地――。
祀られている神獣青龍のことすら、東方の蒼陵国が祀る神獣のひとつとしてしか知識がない。
各国の神獣の特性はその国だけに口伝で伝わるものだから、黒陵の姫がわからなくても気にしなくてもいいと、昔ハンが言った。
――まああれだ。神獣の特性は、武神将が引き継いでいるから、ジウ将軍から色々推察してみるといい。
武闘大会で常に準優勝のジウ=チンロン。
ごつく、髭だらけでむさい大男であり、色男たるハンとは種が違う。
正直、最初見た時……獣だと思って恐かった。
しかもハンのように口が達者で笑い上戸でもなく、どちらかといえば口下手で生真面目で、冗談があまり通用しないような男だった気がする。
「ハンが水……じゃあジウ殿は……? 顔は激しい気性そうに見えるけれど、お話している分には穏やかでおとなしかったような…。だけど戦い方はかなり派手で、そういう点ではハンと共通している気がするけれど…。ジウ殿から想像出来るものはないわ。青龍……龍……にょろにょろ? ジウ殿がにょろにょろ?」
そしてふと、ユウナは呟いた。
「玄武って……水の神様だと言われてきたけれど、なんで山に覆われた黒陵に祀られていたのかしら? 水の神様なら……海に浮かぶという蒼陵国の神獣、青龍の方が相応しいんじゃ?」
首を捻りながら、ただひたすらユウナは海を見つめ続けた。