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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
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黒陵国から至近にある蒼陵国までは、天候に恵まれれば船で約7日ほどで着く距離にある。
ユウナとサクを乗せた船は、わんさか居るネズミを食べられて幸せそうな白イタチ(基、傍目ではただの子亀)の機嫌度に比例して、晴れ渡る一方。
サクもイタチも最初こそ力を使えども、その後特別な力を出しているわけではなく、単純に……船旅慣れした商人達が驚き続けるような好天候に恵まれ続けているだけのことらしい。
天が味方しているようだ――。
これから、不安要素盛りだくさんの見知らぬ環境に飛び込もうとしているユウナには、頑張れと背中を後押ししてくれているような気分になる。
航路をきっちりと示す燦々と輝く太陽は、空の色が濃くなるにつれて赤い凶々しい月を連れてくるものの、その不気味さを飲み込むほどに海原は雄大で、赤き魔の力からも、洋々たる大海に護られている安心感をユウナにもたらせていた。
海の包容力は、まるでハンのようで、サラのようで。
そしてサクにも繋がるその空気は、黒陵の神獣として祀られ続けた堅固の水神、玄武の特質そのものであることをユウナは知らない――。