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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「なぁ、気づけば俺達だけで酒盛りしてるけどよ、他の奴はどうした?」
「は? いたか? 最初から俺達だけだったろ?」
「ん~。最初は女も何人かいたような……。女、女、おん……ZZZZZZ」
「おい、こら酔っ払い、ここで寝る…な……ZZZZ」
「女、女……っ、うぉ~、俺は現役なんだ~!! 俺、あの嫁さん滅茶苦茶好みだから、少し借り…」
酔いが回りすぎて、国法より欲望に突っ走ろうとした若い男に、常人には見えぬ速度でサクの身体が動き、気づけばその男は甲板の上で気絶している。
「おい、どうした? こいつ突然吹っ飛んだぞ?」
「今、すげぇ風が巻き上がったよな。だけど天気だし……」
皆が騒ぐ中、
「きっと青龍の仕業だろう」
サクだけは呵々と笑い、真実を素知らぬふりをしながらも、その視界の端には常にユウナを捉えている。
「……青龍?」
サクの言葉に、蒼陵出身だという商人達はきょとんとした顔をした。
「青龍だよ、青龍。蒼陵を護る神獣!! 蒼陵には青龍殿があるだろう? そこに祠官や武神将がいるだろう?」
なにをいまさら、そうサクは付け加えた。
「ああ、確かにそんなものあったな。だけど俺ら商人は、自国に留まることはあまりないからな、馴染み薄いというか」
「ああ、蒼陵の守護神ならば神獣の存在より、うちの武神将の顔……みたいなところあったし。もう人間通り越して、恐い珍獣だろう、うちの武神将」
サクはジウの顔を思い出す。
"恐い珍獣"
「……ぷっ」
思わず吹き出してしまった。
「確かに、魔も逃げていきそうだ」
「「「だろ~?」」」