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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「よ、よよ嫁!?」
「シェンウ家でも求婚してくれたし、俺の未来も安泰だ。俺……、姫様が主でも祠官でも、嫁、諦めてませんから」
ユウナの両頬を両手で挟み込むようにして、サクはゆっくりとユウナの顔を覗き込む。
「……っ」
歓喜に潤んだサクの目は、飢えた肉食獣の如き色に染まりつつあった。
狙いを定めたようなその鋭い視線に、誘うような妖艶さを滲ませて、愛する姫にゆったりと笑いかける。
「だから、早く堕ちて来て下さいね」
本気とも冗談ともとれぬ言葉で――。
「俺は……待っていますから」
サクは艶然とした笑みで、囁くようにユウナに語る。
「定期的に念を押しておかねぇと、姫様なかったことにしちまうかもしれねぇんで。これは"想いをぶつけない"という約定には違反してません。ぶつけるというのはこんな可愛らしいもんじゃねぇですから。早く姫様が堕ちてきてくれねぇと、俺、ぶつけられなくて苦しんですよ?」
俯いてしまったユウナ。
照れているのだろうと判断したサクは、ますます愛らしい素振りを見せるユウナが可愛く思い、再び身体でぎゅっと抱きしめた。
嫋やかな身体の感触が、サクの身体を熱くさせる――。
「だから姫様……。……姫様?」
言葉を切ったのは、ユウナが気まずそうな表情をしていたのを、横目で見たからだった。
「なんですか、本気になかったことにしようかと?」
サクの声質が冷たく硬質となる。