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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
黒陵の姫として何不自由なく育ち、黒陵自慢の華やかな都揺籃によく遊びにいっていたユウナにとって、この程度の煌びやかさは心躍るものではなかった。それにそんなものを身につけたい気分でもない。
ただ、蒼陵の品ということは物珍しいとは思う……そんな程度の反応に、少年はがっかりした様子で、しかし負けじと色々と珍品を見せ始める。
「ねえ、蒼陵のものより、玄武の装飾品ってないかしら」
「お姉さん。黒陵の奴らに売りつけるものが、黒陵のものだったら全然売れないじゃないか。僕が持っているのは全部蒼陵のだよ。ほら、虹彩石とか綺麗だろ? 青龍織はどう?」
ユウナは困った顔をした。
「うーん、今欲しいのは、玄武のものなのよね。……って、あら?」
その時、袋からコロコロと転がり出たのは、腕輪だった。
金色に光る腕輪に刻まれているのは、黒、青、赤、白の神獣の模様。
「あっちゃ~。処分し忘れた……」
「処分? なんで?」
「凶々しい予言があるために、金の色は禁忌なんだ。だけどそれ、その金色は月の色だって言われて、それを取り巻く4神獣を描いた吉兆のものなんだよね」
月の女神ジョウガと、4神獣。
その中には玄武がいる――。
これは儀式に使えないだろうか。
儀式に使えないとしても、新たな武神将となったサクに上げたい。
ジョウガと神獣の加護があるようにと。
サクはリュカの腕輪は海に投げ捨ててしまった。
首には自分の上げた首飾りをつけていたけれど、それは玄武殿から出た時からサクの胸元に見かけていない。
今さら在処を問いただすほどのものでもないし、これを贈りたい――。