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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「……貴方、商人?」
「正確に言えば商人の卵。修行だと蒼陵で商人やってる親父に旅に出された。黒陵に品物持って売りさばこうとしたら、蒼陵に帰る船がなくなると噂を聞いて2日で出直しさ。だけどなにも売れなかったというのは格好悪いしさ。女性向けのものも一杯あるから、見て行ってくれよ」
少年の力は意外に強く、ユウナはずるずると中に引き摺られた。
一応、万が一のために扉は開けっ放しのままにしておき、いつでも逃げ出せる状態にだけはしておくのは忘れない。
「なに警戒してるのさ。こんな子供が、お姉さんをなんとかしようなんて不埒なことは考えるはずないだろう?」
そうからからと笑いながらも、入り口を開いておくことに抵抗はないようだ。それで、ユウナは幾らかこの少年への警戒心を解いた。
入ってみると、ひとりくらいなら丸まればゆうに寝泊まりできるぐらいの空間はある。
「実はさ、近衛兵が手形っていうのくれなかったんだ。子供の商人だと認めてくれなくて。だから無理矢理忍び込んだんだ。あはは、僕小柄だから積み荷に紛れ込んでさ。丁度でかい木箱あったしね。
女のひと結構この船に乗り込んだと思ってたんだけど、どこにもいないんだ。他の女の人達はどこにいるの? 僕ここに居るライバルに負けないよう、商売したいんだけどさ」
「やっぱり女のひと、沢山いたんだ」
「うん。あれ、見てないの、お姉さん」
「ええ、見つからないのよ。ここ以外に、こうやって部屋みたいに寝泊まりできる場所ってあるかしら?」
「さあ。他の女の人を見つけにくいんじゃ、なおさらここで商売商売。お姉さん、見て行ってくれよ!!」
少年が手前側の袋を開いて床に拡げれば、きらきらと光る装飾品がたくさん流れ出てきた。