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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
自分が精一杯の愛の表明をした後で。
リュカとの愛の未練がないのは、己が薄情だからと泣いたその後で。
これからリュカにも絶つことが出来ぬ、神聖なる絆を培おうとしている中で。
"あたしの武神将"と呼んだくせに。
自分が欲しいと懇願したくせに。
危機の時に口にするのは、リュカの名なのかと。
ずくん、と鋭利の刃物に胸を刺し貫かれた気分だ。
今まで熱かった部分が、痛みだけを反響させる空虚な空洞となって、そこから体内へ凍気が浸透していきそうだった。
長く傍に居れば、愛を伝えれば、いずれかは想いが伝わると――浮かれきっていたから余計に。
どこかで現実を甘んじていた自分。
強く想えば、行動を起こせば。
仮に決定されていた運命であろうとも、どんな苛酷な現実をも変えられるのではないか。いや、変えて見せようと。
それが、どうだ。
日にちも変わらぬ短い間で、露わになったのは厳しいだけの現実。
自分に変化をもたらした行動は、ユウナにとってはなにも変化をもたらせず、逆にリュカの名を呼ばせる結果になった。
わかっていたはずだ。
ユウナはリュカが好きなのだと。
わかってはいたのだ。
今でもわかっているというのに。
それでも、サクが心に受けた衝撃は大きすぎた。
まるで、1年前の再来のようだった。
変わらぬ現実を見せつけられて、再び吐き気が胸を襲っていた。