この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「あ、シバの声だ」
テオンが困惑に満ちた顔となる。
「ねえテオン、どうするのお嬢とこの動かない猿。売り物にならない人間は、仕事を見られたら殺して海に棄てろが、鉄則だったよね。
あたい……どっちも嫌なんだよね。あたい、お嬢気に入っちゃったんだ。お嬢をとっ捕まえようとしていたあたいを、極悪猿から助けてくれたし」
「誰が極悪猿だ、こら!!」
「優しいし、あたいを女として扱ってくれるし女として話もわかるし。売るくらいならもっとお話してたいし、殺したくもないよ。恩人だもの。この猿はどうでもいいけど」
「おい、こら」
サクの声など無視して、子供ふたりは話し込む。
「兄貴の作った掟重視のシバに見つかったら、速攻どうかされちゃうよ。テオンはどう? テオンだって一度逃がそうとしたんでしょう?」
「うん。僕もお姉さんは売りたくも殺したくないなぁ。ここのお兄さんはどうでもいいけど。あ、だけどお姉さん思えば、このお兄さんも生きていた方がいいか」
「俺の扱いはなんだよ、お前ら!! つーか、聞けよ、なんで無視よ!?」