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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「夫婦だろうがなかろうが。やっぱり、お姉さんがお兄さんのために腕輪を選んだり、泣きながらでも髪を切ったりする姿は可愛くて。そんな健気なお姉さんを困らせて、仲違いさせちゃったのは僕のせいだから、責任も感じるんだよね……。だから"ここにはいなかった"ことにしようとしたんだけど」
「だけどさ、テオン。この船放置にしても、この船の船長もういないんだから、結局は漂泊船となるんだよ? どっちにしても海の藻屑となるのなら、連れて行こうよ。きっと兄貴も殺しはしないさ」
「うーん……。殺しはしなくても、お姉さん……兄貴の好みどんぴしゃりなんだよね。これはもう、食べられちゃうよね。イルヒも知っているだろう? 兄貴のあの女好き。何人精気抜かれて海に沈んだことか。そうなるのはちょっとな……」
「そうだよね、兄貴絶倫中の絶倫だし、こんな細っこいお姉さんなら、何度かやっただけで壊れちゃうよね」
「は!? 絶倫!? やるだの壊れるって……お前ら……」
サクは慌てふためいた。
「どの選択肢がいいのかわからないね。だったら即断して貰おうか、あたい達じゃ決められない」
「そうだね、恨まれるのもやだし」
サクとユウナをちろちろと見ながらのふたりの会話に、サクの目が険しくなる。
「オイコラ待て。この場で死ぬか、漂泊船に乗り続けるか、姫様を怪しげな兄貴に献上するかの三択を迫っているわけじゃねぇだろうな」
「その通りだよ。賢い猿に成長したみたいだね、あたいびっくり」
「どれ選んでも苛酷だとは思うけど」