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吼える月
第17章 船上2
その時、不意に思い浮かんだのはテオンの言葉。
――お姉さん、これ……倭陵で高級でされてる蜂蜜あげる。せめてものお詫びに。これ舐めて仲良くなって。あ、だけど少しずつ舐めてよ。いい? 少しずつだよ!! これ、貴重なんだから。
――ちゃんと部屋に鍵かけてよ。どんな音がしても、開けちゃ駄目だよ。まあ開けるほどの余裕もなくなるはずだけれど……。
"余裕もなくなる"――とは?
蜂蜜特有の甘味と、僅かにする苦い味。
そして発情――。
「まさか――」
サクは思い出す。
過去に味わったことがある、その苦みの正体を。
それは――。
「多分……」
サクは重々しく口を開いた。
「あの蜂蜜は……媚薬が入っていたんです」
かつて、ユウナへの失恋を振り切る為に、色街で女を抱こうとして抱けず、強行的に大量の媚薬を飲んだことがあった。
結果としては、それでもサク自身は使いモノにならなかったのだが。
あの味だ。
「ビヤク?」
「はい、相手が誰であろうと……身体に触れて貰いたくたる薬です。姫様、俺に……身体を触れて貰いたいのでしょう?」
「……っ」
ユウナは顔を赤らめ、返事をしなかった。
苦みは、あの時に感じたものと同じだ。
舌先が僅かに痺れたかのような苦み――。
サクは手についたそれを舐め、ユウナは首にかかった蜜を舐めた。
それで身体が必要以上の興奮状態になっているに違いない。
ある程度の薬に耐久性があるはずの自分ですら欲に流されそうになり、そして、首筋が灼熱の熱さを持っているのは、ユウナが舐めたという行為のみに留まらず、肌に置くだけでもじんわりと浸透する種のものなのかもしれない。
だとすれば。
それを口にしたユウナの影響はどうなってしまうのか。
自分があのひと口で、或いは肌に浴びたせいでこれだけの性欲を持てあましているのだ、ユウナは如何ほどの状態になっているのか。