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吼える月
第17章 船上2
怖れるのなら、訊かずにいればいい――。
そんな……現実に臆した思いは、闘いを覚悟したサクに逃げを許さなかった。
呼吸を整えたユウナから出た言葉は、
「……次は、一緒がいい」
少なくとも、"そこ"にはサクはいなかったのだと告げるもので。
あれだけ愛を込めても、あれだけ尽くしても、そこに自分がいなかった結果に終わったことを憂えるサクは、自嘲的な落胆を感じながらも、ふと、注視は……別のところに向いた。
「"次"?」
たった今、盛大に達したばかりだというのに?
恥ずかしいと身悶えして初々しい反応を見せていた割には、性の貪欲さを見せたユウナの変貌が、すっと受け入れられない。
「つ、次を催促されてるんですか?」
サクに向けられているのは、恨みがましいようにも見えるじとりとした目。……そして、いまだ欲情の熱が消えぬとろりとした目。
「そう。なにひとりで……終わったような顔をしているの?」
……まだ、媚薬効果は取れていないらしい。
しかも――。
快感を得て満足……ではなく、逆に不満げな顔をしているようにも見える。……それは、男の沽券にかかわる由々しき事態。
「あの……姫様? "恥ずかしい"を連呼しながら、あれだけ派手に達して、それでもまだイキ足りなかったんで……」
「気持ち……よくないわけないでしょう!?」
ユウナは羞恥の涙で潤んだ目でサクを睨み付けるが、熱を見せるその目においては、ただの流し目を送ったに過ぎない。
「じゃあ、ええと……?」
「……恥ずかしくてたまらないのよ!! あまりに気持ちよすぎてたまらなくて、ひとりで……その、痴態をサクに見せたから。サクもって言ったのに、あたしひとり……その……その……もうわかってよっ!!」
言い難いのか、拗ねた顔は羞恥に紅く染まり、うまく表現出来ない悔しさを八つ当たりするように、ぽかぽかとサクの胸板を叩く。