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吼える月
第17章 船上2
 

「………。俺……怒られているんですか…?」

「そう、怒っているの。あたしひとりであまりに気持ちよくされたから。……恥ずかしくてたまったもんじゃない。だから、次」

 照れ隠しなのか、とろりと……欲情をしたままの顔はつんとすまされている。


「姫様。俺、"だから"……に繋がらないんですが。俺は一体なにに怒られて……。……。……いやいいです。なんだかすげぇ嫌な予感がするんで」


 おねだりをされたのなら嬉しいのだが、もっと別なものを本能的に感じたサクは、無意識に……寄り添う腰を少し引いたのだが、ユウナは、そんなサクの腰に両手を巻き付かせて、引き寄せる。


「サク……も、まだ……身体じんじんするでしょう?」


 それは誘惑――。

 女の艶に彩られたユウナは、含んだような笑みを見せた。



「次は一緒に、ね? ……気持ちよくなろう?」


 女の絶頂を体感したユウナの顔はどこか気怠げで。


「さっき以上の気持ちいいこと……しよう?」


 それが尚一層、扇情的な表情を作り出す。


 消えぬ媚薬効果と、達したばかりの解放感、そしてサクに対する罪悪感が、ユウナをいつも以上に大胆にさせていた。

 その顔は、呪詛の発作時のような、妖しいまでの艶を帯びて――。




 "さっき"


 それはきっと……、己の肉棒をユウナに触らせた時のことだろうとサクは察した。愛するものの手で包まれたあの悦びと猛りが再生される。


 それ以上の……気持ちいいこと?


「……っ」


 
 どくん。


 サクのその部分が、さらなる快感を求めて、灼熱の芯を持って息づいた。

 抑圧していた快感への渇望が、艶めかしく誘うユウナの熱願によって解放されようとしている――。


「ひめ……さ、ま……」


 興奮に乾ききった喉の奥、サクがごくりと生唾を飲みこんだ時、突如幻想世界で揺らいでいたユウナの顔が、平生における憮然としたものに変わる。

 
「脱いで」

「え?」


 その表情の転移についていけずに、思わずサクは数度目を瞬かせた。


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