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吼える月
第17章 船上2
「サク……ありがとう」
好きになってくれて。
こんなに優しくしてくれて。
言葉にならないユウナの想いも、その唇から零れる。
"ありがとう"と"大好き"。
……ユウナは、前者だけを言葉にした。
後者を容易く口に出来ぬもどかしさが胸に渦巻く。
だけどサクが本当に好きだから――。
だから誤解だけはして貰いたくない。
好きだから、簡単に言えない"好き"がある。
伝えたいのに伝えられない言葉。
大事だからこそ、今ここで言うべきではない言葉。
快楽に溺れそうな状態で言えるような、安易なものではないと思えばこそ、だから今、自分が言えることだけは伝えたい――。
「サク……だから、ね?」
引いては寄る波のような、表面を滑る抽送の刺激にとろりとしながら、ユウナは同じように、サクの頬に唇を落とした。
「サクだから……こんなことしてるの。サクだから……こんなこと出来るの。一緒に……気持ちよくなりたいの。今はそれだけで……ごめんね。あたしも同じだって、言えなくてごめんね……」
罪悪感にも似た色を顔に浮かべ、どこまでも率直に、誠実にサクの想いを受け止めようとしているユウナ。
「ごめんね、サクがあたしを待つって言ってくれたのに、それより先に、身体の気持ちよさに流されてしまって、ごめん。ごめんなさい……。だけど、サクと一緒だから……こんな淫らなことも出来るの。はしたないことでも出来るの……っ。だから、だから……」
ほろりと流れる涙。
サクの顔がたまらないというように歪む。
「なんで……姫様が謝るんですか」
「……だって、だってサクがあまりに優しくて。尽くしてくれるのが、あまりに忍びなくて……。サクが望むもの、本当は一番にあげたいのに――っ」
悲鳴のように迸る、ユウナの"大好き"――。