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吼える月
第17章 船上2
サクは柔らかく微笑んで、ユウナの瞼に唇を落とした
「俺は……同情が欲しいわけじゃない。姫様が幸せを感じるのなら、いや……俺が姫様を幸せにできるのなら、この行為も幸せですよ? 俺以上の幸せものはいません。愛する姫様を、直に感じさせて貰えるんですから。……しかも俺の幸せを思ってくれているというのなら、尚更に嬉しいです。嬉しくてたまらねぇです」
「サク……っ」
「いつもの……延長でいいんです。無理に変わらなくていい。俺が好きなのは……そのまんまの姫様だから。少しずつ、少しずつでいい。俺を……少しずつでいいから、だから少しずつ……俺のことを……っ」
"好きになって欲しい"
サクもまた、自分の胸に強く渦巻く言葉を口に出せない。
それは、ユウナを困らせるものであるのがわかるから。
だから今は――容易く口に出来ない。
……サクは、喉奥から零れそうになっているその言葉をぐっと飲み込み……、そして切なげに小さく笑いながら、ユウナに言った。
「すみません。……おしつけたいわけじゃねぇんです」
「ん。わかってる。わかってるから、そんなに不安気に笑わなくていい。……すぐには出来ないけど、ゆっくり……待っていてくれるのなら。あたし……ちゃんとサクに応えられるようになりたい」
ユウナはサクに抱きついた。
……誠実であろうとするサクが、無性に愛おしくて。