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吼える月
第18章 荒波
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神々しいまでの目映い朝陽が、一面に煌びやかな光を散りばめる。
その光輝く様は、暫し夜の空を支配していた凶々しい紅い月を凌駕するように、穏やかで神聖で、希望に満ちた未来を彷彿させていく――。
「姫様、海ってのは長閑(のどか)でいいですねぇ。このままだと、平和ボケしちまいそうだ」
「………」
「海の男ってのはおおらかなものが多いらしいですが、これだけ綺麗なものを見続けていれば、美意識ってもんはおかしくならねぇんですかね?」
「………」
「すっげぇ……綺麗なもんですよね、海ってのは。この…すべてをひとつに凝縮したものを姫様に贈りてぇな…。だけどあまりに綺麗過ぎる姫様が、今まで以上に"女"の輝きを魅せちまったら、俺……正気でいられねぇかも……」
「……っ」
「親父は武闘会だのでよく国外にも行っていたし、お袋は南の緋陵から船で黒陵にきたらしいし、俺、小せぇ頃からふたりに海とは如何なるものか聞かされていたんです。
親父曰く"生臭い生き物の冷たい風呂場"。お袋曰く"吐きたくなるだけの黒歴史"。だから正直俺、海がこんなに綺麗な風景を見せてくれると全然期待してなくて。こんな綺麗な海を目にしてるくせに、あのふたりの感性、なんか変ですよねぇ」
「………」
「姫様、寒くねぇですか? もっと、"ぎゅっ"ってしていた方がいいな。……はぁっ、俺の体温でこうしてくるんで、姫様をこのまま俺の中に閉じ込めていられたら……」
「……っ」
「……姫様?」
「………」
「……姫様、すっげぇいい香り。俺……また姫様を舐めたくなってきたかも。……短い髪になって露わになったこのうなじが…俺をそそるんだよな、女を強調して。蜂蜜もまた少し残っているし、"眠っている"姫様につけてまた舐めようか? 姫様も気に入ってくれているようだし、いいよな……?」
「……っ!?」