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吼える月
第18章 荒波
 


「……なぁんて。やっぱ姫様が眠っている時にそんなことをして、姫様の信用無くしたくねぇし……」

「………」


「だけど、眠っているのなら…言うくらいは……。こうやって、姫様の鼓膜の奥に届くように……。姫様を起こさないように、囁いて……。

姫様……俺、
もっと姫様と愛し合いてぇ…」


「……っ!!」


「おや、凄い身震い。もしや姫様……起きました?」

「………」


「………」

「………」


「しぶといですね、その"狸寝入り"」

「……っ!?」


「……後ろ抱きにした俺の膝に座ったまま器用に"狸寝入り"を敢行するのなら、まずはそのわかりやすい反応はやめた方いいです。それとも、普段の時も、あんな睦言のような言葉が欲しいんですか? お望みなら、何度でもこうして耳もとで囁きましょうか。とっておきの甘い言葉」

「……っ!?」


「……起きねぇと、とんでもねぇ甘ったるい言葉、言いますよ?」

「……っ」


「………」

「………」


「……へぇ、まだ狸寝入り?」

「………」


「俺と根比べでも? なかったように出来るとでも?」

「……っ」


「それとも俺の甘い睦言、期待してるとか?」

「……っ!?」


「そうか、期待されてるんですね、俺。お願いされたり、随分と信頼厚くて嬉しいです。覚えてますか、姫様。俺に可愛く抱きついてきて、姫様の股に俺のなにを挟んで、俺にお願いしたのか」

「……っ!!!!!」


「……随分と、心臓の音早いですねぇ。思い出して動揺してません?」

「………っ」


「………」

「………」


「ほう、まだ勝負する気ですか。そうですか。でしたら、俺……甘い言葉の前に、あの時の詳細をここで語りましょう。俺の指や舌だけではなく、俺の恥ずかしい部分にも、あんなに感じて乱れる姫様の……」



「やめてぇぇぇぇ!!」



「よっしゃぁっ!! 俺の勝ち!! あははははっ」


 耐えきれずサクの膝の上から立ち上がって逃げだそうとしたユウナの腕を引き、サクは大笑いしながらまた膝の上に戻した。


「誓約したでしょう? "治療"では後日引き摺らないと。それを…目覚めた途端に、そこにあった更紗の布で顔を隠して俺から離れて逃げだそうとした姫様への"お仕置き"です」


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