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吼える月
第18章 荒波
「あたし…サクがね、昔あげた黒水晶のあの首飾りしてくれていたのがとても嬉しかったの。だからあの首飾り代わりに、今度はこれをお守りのようにしてくれたらって」
「あれ……ちゃんとありますよ。いつ刃物が飛んでくるかわからねぇから、首にしていねぇだけで」
サクは前衣の裏側を見せた。
「姫様連れて家に戻った夜、お袋が縫い付けてくれてたんですよ」
――これからも姫様を横抱きにして運ぶことがあるんでしょうし、首飾りを剥き出しにしていたら、首に捕まる姫様には痛いでしょう?"
「まぁ! 運んで貰えるだけでもありがたいのに、そんな気遣いを受けていたなんて……。サラの優しさが嬉しいわ……」
そう顔を綻ばせながら、ユウナは嬉しそうな笑い声をあげた。
「うふふ、でもよかったわ。状況が状況だから……あれ、なくなっちゃったかなって思ってたから。さすがはサク、そしてサラだわ。
武神将になれるようにって心を込めた贈り物が、サクを武神将にしてくれたのだとしたら。武神将おめでとう、いつまでも健やかで輝かしい未来がサクに訪れますようにって心を込めたこの腕輪に込めた願いも、きっと実現するわ。
それくらいあたしは心を込めるから」
ユウナは腕輪を両手に持つと、
「黒陵を守る神獣玄武。そして玄武の仲間である…青龍、朱雀、白虎よ。そしてそれら神獣を従える、倭陵を守る月の女神ジョウガよ。
玄武の武神将サク=シェンウの未来に祝福を。どうかその行く末を護り給え……」
唇を落とした。
それは神々しい儀式のようで。
女神ジョウガへの祈願というより、まるでジョウガが降臨しているかのような神秘的な美しさに満ちたユウナ――。
見つめていたサクの唇から、ほぅっと感嘆のようなため息が漏れ出た。