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吼える月
第18章 荒波
「………」
「………」
「………」
「……ぷ」
「………」
「……ぷぷぷ。姫様に似て、すげぇ素直な腹の虫」
「聞いてないふりをしてよ!! やっぱりサクは、乙女心をわかってくれない!! もぅ、もぅ――っ!!」
ユウナは、腹をサクに押さえられているために、足だけをバタバタと動かして抗議をした。
「はいはい。今食糧調達してきますから、そんなにカッカカッカしないで。……あ、そうだ、姫様。"忠誠の儀"なんですが、その際に姫様の髪を一束頂きてぇんです。ちょっとでいいんですが」
「なんで髪?」
「いや、姫様を身近に感じられるものであればなんでもいいんですが、姫様にあまり喪失感を与えなくて、俺も持ち歩けるものであるのなら」
「髪……持ち歩くの?」
ユウナがあからさまに嫌な顔をする。
「嫌ですか?」
「だって、なんか……形見みたいで」
「しかし姫様の代わりになりそうなものは……」
「そうだわっ!! 腕輪」
ユウナがパンと両手を叩いた。
「あれ? どこにやったかしら……」
「これですか? 姫様の服から落ちたんで、一応拾ってたんですが」
サクが自分の懐から取り出したのは、ユウナの服を畳む際に落ちた金の腕輪。それを見たユウナは破顔した。
「そうそうっ!! テオンのところでこれを見て、絶対サクにいいと、武神将のお祝いにあげたいなと思ったの。金色が女神ジョウガ、そして刻まれてるのは四神獣なんですって。武神将のサクに玄武以外にも強力な加護があるのなら、無敵じゃない?
ねぇこれはどうかしら? 私の祝福の念は籠っていると思うわ。いえ、もっともっと込めて渡すから」
サクは、腕輪とユウナを見比べた。