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吼える月
第18章 荒波
 

「おい、どうしたんだよ、お前ら――っ!?」


 ユウナの思考は、テオンのひっくり返った声で途切れた。

 そして彼女は、背後から異様な殺気を感じて振り返る。


 テオンと同じ視線の先を――。



「殺せ」

「女達を殺せ」

「青龍様に捧げろ」



 殺気に満ちた赤い目――。

 ……テオンとイルヒ、そしてユウナ以外、正気ではなかった。
  
 子供といえど武器を持たせれば大人顔向けの働きをする、その数8人。誰もが得意な武器を持ち、三人との距離を詰めている。


「ちょっ……どうしたの、貴方達!!」

「なにやってんだ、あたい達は仲間だよ!?」

「しっかりしろよ、どうしたんだよ、皆!!」


 テオンとイルヒの懐にも小刀はあるのだが、それを取り出す相手ではないとあえて手にはしていなかった。

 武器としてこちら側にあるのは、ユウナの持つサラの剣のみ――。


 サラの剣が、陽光に反射して玲瓏な輝きを見せた。


 それを合図にして、一斉に子供達は飛びかかってくる。


 振り上げられる銛や槍、小刀。

 子供とはいえども、動きは素早く正確で。 


 無様に揉み合うようにしながら、なんとか攻撃を躱すユウナ達。

 ユウナは浅く忙しい息をしながらも、昔ハンがつけてくれた護身術の稽古が無意識に体に刻み込まれていることに感謝する。


 突きつけられる武器。

 タイミングこそが命。突き刺さる直前にて体を横にずらし、その腕にそっと手を添えながら、反対の手で真上から垂直に手首を叩いて武器を落とす。


 たとえ腕力がなくとも重心移動のコツさえ心得れば凌げるのだと、何度も何度もハンや警備兵相手にやらされたことが活かされていた。


 相手が子供であったことが、体が鈍っていたユウナにとって幸運だった。

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